
もし、やすきよがM-1に出たなら、、、
伝説の漫才コンビ「横山やすし・西川きよし」が現代のM-1グランプリのステージに立ったなら、果たしてどのような結果を残すでしょうか。
マイク1本と言葉の応酬だけで爆笑を生み出す「しゃべくり漫才」は、いつの時代も笑いの王道として愛されてきました。
しかし、多様化する現代の漫才賞レースにおいて、その王道スタイルはどのような結果を出しているのでしょうか?
そこで、M-1グランプリとTHE SECONDの上位進出組のネタを、独自の基準で集計しました。その結果、しゃべくり漫才はM-1で約半数、THE SECONDでは大半を占めていました。(対象や判定基準など詳細は3.にて)
当記事では、そのデータをもとに、「王道」の現在地を探り、そして漫才やM-1をさらに深く楽しむためのおすすめ書籍9冊も紹介します。
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1.もし、やすきよがM-1に出たなら?「王道の漫才」と賞レースを考える
「長く愛されてきた話芸」と「その日の舞台で競う賞レース」
両者の関係性は、必ずしも重ならないのかもしれません。
「しゃべくり漫才」への思いを出発点に、M-1という大舞台で「王道」がどう見えるのかを考えてみます。
(1)「漫才」は史上最高のエンタメ! そして「しゃべくり漫才」は原点であり王道
漫才の面白さは、基本的には二人の人間が会話をするだけで、観客を笑わせられるところにあります。
舞台装置や小道具がなくても、言葉、間、表情だけで笑いを生み出せる。
もっともシンプルなスタイルでありながら、その場を爆笑の渦に巻き込むことができます。
私はそんな漫才こそ史上最高のエンターテインメントと思っています。

なかでも、日常的なおしゃべりでボケとツッコミを繰り広げる「しゃべくり漫才」は、漫才の原点といえます。そして時代が変わっても愛され続けていることから、まさに漫才の王道といえるでしょう。
(2)今や国民的行事となったM-1グランプリ。「王道」はこの舞台でも強いのか?
一方、現代の漫才を語る上で外せないのがM-1グランプリです。
2001年に始まったM-1は、いまや国民的行事として定着し、2025年大会には11,521組がエントリーしました。毎年年末になると、優勝予想、出場者や審査員まで気になり始める年末の風物詩でもあります。

若手芸人たちがしのぎを削るこの真剣勝負の舞台では、コント風の設定や目まぐるしく場面転換するネタなどさまざま漫才が披露されてきました。
では、そんな現代の最高峰の舞台において、伝統的な「しゃべくり漫才」は果たしてどんな結果を出しているのでしょうか?「王道の漫才」とM-1グランプリとの関係が気になります。
(3)やすきよがM-1に出たなら?という妄想を入口に、M-1と「王道」の関係を考える
もし、やすし・きよしのようなしゃべくり漫才の名コンビが、現在のM-1に出場したら。。。
そんな想像をすると、ワクワクするのと、やはり「しゃべくり漫才」と現代の賞レースとの関係が気になってきます。
もちろん、やすし・きよしが現在のM-1に出場することはありません。
だからこそ、「もし出場したなら?」という妄想は、王道の漫才を考えるきっかけになります。
そこで今回は、実際のM-1最終決戦でのネタについて、「しゃべくり漫才」の比率はどれくらいなのか?(どれくらい勝ち残ったのか?)を独自に集計しました。
さらに、結成16年以上の漫才師が競う「THE SECOND~漫才トーナメント~」(現在のM-1は結成15年以内)も集計。
単なるイメージではなく、実際のネタから判定して、数値にすることで、現代の賞レースにおける「王道」の姿を探りました。
2.しゃべくり漫才とは? コント漫才との違い、醍醐味、王道の系譜
あらためて「しゃべくり漫才」とはどういう漫才のことをいうのでしょうか?
二人が何げない会話をしているだけなのに、どうしてこんなに面白いのか?
ここでは、「しゃべくり漫才」を独自の解釈も含めて解説します。
「コント漫才との違い、その醍醐味、伝説がつないだ系譜」
この三つをたどりながら、「王道」と呼びたくなる魅力を、一緒に味わってみましょう。
(1) しゃべくり漫才とは? コント漫才との違いを「場面・会話・本人感」から考える
本記事では、しゃべくり漫才を、
「舞台上の二人が主に本人として会話を進める漫才」と捉えます。
対して、「場面を設定して、役柄を演じて進める」が、コント漫才を考える目安です。
注目するのは、「場面が変わらない、会話が中心、本人として話す」
「本人として」とは、普段の性格のままという意味ではありません。別の人物を演じているかどうかに着目します。ただし、両方の要素を含むネタもあり、境界は一律ではありません。
※判定資料では、「場面不変」「会話度」「本人度」と呼んでいます。
(2)しゃべくり漫才「3つの醍醐味」 ~言葉の応酬、会話の妙、人間味と関係性~
しゃべくり漫才の醍醐味は、まず「言葉の応酬」にあります。絶妙な言い回し、意外な言い換えや鋭い切り返しが積み重なり、会話での掛け合いそのものが笑いへと転がっていくのです。
2つ目は「会話の妙」。日常会話のような何気ないやりとりが、思わぬ方向へ転がり、気づけば大きな笑いになっている。その話芸の面白さです。
3つ目は「人間味と関係性」。芸人本人の個性に加えて、二人の相乗効果を感じさせる関係性も、笑いにつながります。素の姿からにじみ出る人間味と長年培った相方との空気感そのものが爆笑へと昇華されるのです。
「この2人の掛け合いをずっと聞いていたい」とファンを魅了してやまない理由こそ、まさにこの3つの醍醐味にあるのです。
(3)伝説がつないだ「王道」の系譜 ~エンタツ・アチャコからやすきよ、ダウンタウンまで~
それぞれの時代に漫才の王道を歩み、そのトップとして世間を席巻した伝説の漫才師たち。
しゃべくり漫才の醍醐味をで体現し、最高峰の笑いを刻み続けて、その王道を次の世代へとつないできました。
ここでは、「王道」の系譜を語る上で欠かせない5組を紹介します。
【エンタツ・アチャコ】
それまで芝居がかった出し物が主流だった寄席に、背広姿で登場し、日常会話のキャッチボールで笑わせる「しゃべくり漫才」の礎を築いた近代漫才の祖です。1930年結成

【夢路いとし・喜味こいし】
「上方漫才の宝」とも呼ばれた「いとし・こいし」の漫才は、上品なたたずまいで、まるで世間話のように自然体。まさに名人芸と称されて、上方漫才の大看板として長く親しまれました。1937年結成

【やすし・きよし】
天性の破天荒さと圧倒的な才能を持つやすしと、人の良さと的確なツッコミが光るきよしは、1970~80年代にテレビと劇場で絶大な人気を博し、漫才を国民的娯楽へと押し上げた伝説のコンビです。1966年結成

【オール阪神・巨人】
劇場での漫才にこだわり続けて、今も上方漫才を支えている重鎮コンビです。抜群のしゃべくり技術と正統派の掛け合いで、長年にわたり漫才界の最高峰を示し続けています。巨人さんはM-1の審査員も長く務めました。1975年結成

【ダウンタウン】
漫才の主流が早口で声を張るスタイルだった1980年代半ばに、ボソボソとマイペースに喋る自然体のスタイルを持ち込みました。その後、「日常会話の延長としての漫才」が若手芸人の漫才の主流になり、それが定着していったことから、「漫才の歴史を変えた」といわれます。コント漫才といえるネタも多い二人ですが、今現在の漫才師に多大な影響を与えた伝説的コンビといえます。結成1982年

3.【データ検証】M-1とTHE SECOND上位進出のネタに、しゃべくり漫才はどれくらいある?
M-1の最終決戦とTHE SECONDの準決勝に進んだ組のネタを、3つの要素で判定し、しゃべくり漫才の比率を比べました。
判定は筆者個人のものである点にご留意ください。
(1)「しゃべくり漫才」をどう判定した? 3つの要素から独自に判定
しゃべくり漫才の要件を、
「場面不変(会話から場面を変換していない)」
「会話度(進行における会話やりとりの度合)」
「本人度(進行における本人の素性でいる度合)」
の3項目とし、それぞれ○△×で評価しました。
判定の考え方として、基本的に「〇が2つ以上」で「しゃべくり漫才」。「〇が3つで純しゃべくり漫才(◎)」
△(×)がある場合は総合的に判断しますが、主に「場面不変」が×だと「コント漫才」に分類しています。
ただし例外もあるため、判定が微妙なケースや△×に説明が必要な場合に、備考欄にて補足・説明を行っています。
対象は、M-1は最終決戦のネタ、THE SECONDは決勝進出組が決勝ネタ、準決勝敗退組が準決勝ネタです。
(2)M-1で「しゃべくり漫才」はどれくらい勝ち残った?直近11年と初期5年を比較
M-1グランプリの直近11年(2015〜2025年)の最終決戦に進出した33組では、
しゃべくり漫才は16組(48.5%)、純しゃべくり漫才は9組(27.3%)でした。
2015〜2020年では50.0%、2021〜2025年では46.7%と、ほぼ半数で推移しています。
優勝に限ると、直近11回中4回がしゃべくり漫才でした。

比較のため、集計した初期5年(2001〜2005年)は、
14組中3組(21.4%)で、近年(2015~2025年)のほうが高い水準です。
今回の独自集計では、初期5年より近年の方が、しゃべくり漫才が多く残っていて、
しゃべくり漫才が、近年好まれてきている可能性があります。
【M-1(2015-2025)】しゃべくり漫才判定表
| 年 | 回 | 最終順位 | コンビ名 | 最終決戦ネタ(題材) | 場面不変 | 会話度 | 本人度 | 判定 | 純 | 備考(判定根拠) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2015 | 11 | 優勝 | トレンディエンジェル | 「モテたい」 | 〇 | △ | 〇 | しゃべくり | △→会話が一方的な傾向あるため。総合的にはコント要素はない。 | |
| 2015 | 11 | 2位 | 銀シャリ | 「うるさい」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2015 | 11 | 3位 | ジャルジャル | 「好きなスポーツ」 | 〇 | 〇 | △ | しゃべくり | △→突飛すぎる言い回し多いため。コント要素はない。 | |
| 2016 | 12 | 優勝 | 銀シャリ | 「うんちく」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2016 | 12 | 2位 | 和牛 | 「夏祭り」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2016 | 12 | 3位 | スーパーマラドーナ | 「時代劇」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2017 | 13 | 優勝 | とろサーモン | 「石焼き芋」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2017 | 13 | 2位 | 和牛 | 「仲居さん」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2017 | 13 | 3位 | ミキ | 「スターウォーズ」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2018 | 14 | 優勝 | 霜降り明星 | 「小学生の頃」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2018 | 14 | 2位 | 和牛 | 「オレオレ詐欺」 | × | 〇 | △ | コント風 | △→演技に対する会話の応酬のため。 | |
| 2018 | 14 | 3位 | ジャルジャル | 「ジャルジャルです」 | 〇 | × | △ | しゃべくり | ×→漫才としての会話のため。コント要素はない | |
| 2019 | 15 | 優勝 | ミルクボーイ | 「もなか」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2019 | 15 | 2位 | かまいたち | 「トトロ」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2019 | 15 | 3位 | ぺこぱ | 「電車で席を譲る」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2020 | 16 | 優勝 | マヂカルラブリー | 「つり革」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2020 | 16 | 2位 | おいでやすこが | 「誕生日ソング」 | 〇 | △ | △ | コント風 | △→歌が主導的な内容のため。会話中心の進行ではない。 | |
| 2020 | 16 | 3位 | 見取り図 | 「地元」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2021 | 17 | 優勝 | 錦鯉 | 「猿」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2021 | 17 | 2位 | オズワルド | 「友達」 | 〇 | 〇 | △ | しゃべくり | △→ボケは妄想が大部分のため。コント要素はない | |
| 2021 | 17 | 3位 | インディアンス | 「売れたい」 | × | △ | × | コント風 | しゃべり主導だが場面変換多く、コント的とみた。 | |
| 2022 | 18 | 優勝 | ウエストランド | 「あるなしクイズ」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2022 | 18 | 2位 | さや香 | 「男女の友情」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2022 | 18 | 3位 | ロングコートダディ | 「遊び」 | △ | △ | △ | コント風 | 「だるまさん~」を興じる場面設定がコント的とみた。 | |
| 2023 | 19 | 優勝 | 令和ロマン | 「ドラマ」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2023 | 19 | 2位 | ヤーレンズ | 「引越しの挨拶」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2023 | 19 | 3位 | さや香 | 「見せ算」 | 〇 | △ | 〇 | しゃべくり | △→やや独演会気味のため。コント要素はない | |
| 2024 | 20 | 優勝 | 令和ロマン | 「戦国時代」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2024 | 20 | 2位 | バッテリィズ | 「世界遺産」 | 〇 | 〇 | 〇 | しゃべくり | ◎ | |
| 2024 | 20 | 3位 | 真空ジェシカ | 「ピアノがでかすぎるアンジェラ・アキ」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2025 | 21 | 優勝 | たくろう | 「ビバリーヒルズ」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2025 | 21 | 2位 | ドンデコルテ | 「名物オジサン」 | 〇 | △ | △ | しゃべくり | △→役を演じる独演風にもみえるため。コント要素はない。 | |
| 2025 | 21 | 3位 | エバース | 「腹話術」 | 〇 | 〇 | △ | しゃべくり | △→想定した人物で進行といえる。コント要素はない。 | |
| 過去11年 | 33 | しゃべくり漫才数 | 16 | 9 | ||||||
| しゃべくり漫才比率 | 48.5% | 27.3% | ||||||||
| 2015年~2020年 | 18 | 9 | 6 | |||||||
| 50.0% | 33.3% | |||||||||
| 2021年~2025年 | 15 | 7 | 3 | |||||||
| 46.7% | 20.0% |
【M-1(2001-2005】しゃべくり漫才判定表
| 年 | 回 | 最終順位 | コンビ名 | 最終決戦ネタ | 場面不変 | 会話度 | 本人度 | 判定 | 純度 | 備考(判定根拠) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2001 | 1 | 優勝 | 中川家 | 「イライラすること」 | △ | ○ | △ | コント風 | △→場面変換して役を演じることがある | |
| 2001 | 1 | 2位 | ハリガネロック | 「学校の先生/童話・童謡」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | 演技は過去の回想内 |
| 2002 | 2 | 優勝 | ますだおかだ | 「漫才師育成ゲーム」 | ○ | △ | ○ | しゃべくり | △→ゲーム内での対話 | |
| 2002 | 2 | 2位 | フットボールアワー | 「結婚式」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2002 | 2 | 3位 | 笑い飯 | 「機関車トーマス/心優しい子」 | × | △ | ○ | コント風 | ||
| 2003 | 3 | 優勝 | フットボールアワー | 「タクシーの運転手」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2003 | 3 | 2位 | 笑い飯 | 「かわいそうな像/避難訓練」 | × | △ | △ | コント風 | △→ボケとそれへのコメントの応酬 | |
| 2003 | 3 | 3位 | アンタッチャブル | 「親友と合格発表」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2004 | 4 | 優勝 | アンタッチャブル | 「子供の万引き」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2004 | 4 | 2位 | 南海キャンディーズ | 「アピール」 | ○ | × | ○ | コント風 | ×→奇行への対応が基本 | |
| 2004 | 4 | 3位 | 麒麟 | 「マラソン実況」 | × | × | × | コント風 | ||
| 2005 | 5 | 優勝 | ブラックマヨネーズ | 「格闘技を習う」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2005 | 5 | 2位 | 笑い飯 | 「誕生日の歌」 | × | △ | △ | コント風 | ||
| 2005 | 5 | 3位 | 麒麟 | 「ファッションショーのモデル」 | × | × | × | コント風 | ||
| 決勝進出組数 | 14 | しゃべくり漫才数 | 3 | 2 | ||||||
| しゃべくり漫才比率 | 21.4% | 14.3% |
(3)THE SECOND〜漫才トーナメント〜ではどうだったか!? M-1との違いから見えてくるもの
結成16年以上が出場資格になる「THE SECOND〜漫才トーナメント〜」は、2023年から始まりました。
参考までに、このベテラン漫才師による賞レースの開始初年から昨年まで(2023~26年)についても集計しました。

準決勝進出4組のネタ4年間分を集計したのですが、しゃべくり漫才比率はなんと87.5%(純しゃべくり56.3%)という想定以上に高い比率を記録しました。4回の優勝者もすべてしゃべくり漫才でした。
この結果から、キャリアを重ねて熟練度を増した漫才師ほど、飾りを削ぎ落とした「王道のしゃべくり」を武器にする傾向や、
年齢によるテンションの違いと漫才スタイルの関係性があるのでは考えました。あくまで個人的な考えです。
【THE SECOND (2023-2026】しゃべくり漫才判定表
| 年 | 回 | 最終順位 | コンビ名 | ネタ | 場面不変 | 会話度 | 本人度 | 判定 | 純 | 備考(判定根拠) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1 | 優勝 | ギャロップ | 「フランス料理」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2023 | 1 | 準優勝 | マシンガンズ | 「ネタ切れ」 | ○ | × | ○ | しゃべくり | 会話のやりとりが少ないが、コント要素はない | |
| 2023 | 1 | ベスト4 | 囲碁将棋 | 「副業」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2023 | 1 | ベスト4 | 三四郎 | 「弟子入り」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2024 | 2 | 優勝 | ガクテンソク | 「サプライズパーティー」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2024 | 2 | 準優勝 | ザ・パンチ | 「Jリーガーへの憧れ | × | △ | × | コント風 | ||
| 2024 | 2 | ベスト4 | 金属バット | 「料理」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2024 | 2 | ベスト4 | タモンズ | 「誕生日プレゼント」 | ○ | ○ | △ | しゃべくり | △→特徴的なキャラを演じているといえる | |
| 2025 | 3 | 優勝 | ツートライブ | 「ゴシップ」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2025 | 3 | 準優勝 | 囲碁将棋 | 「モテる方法」 | × | ○ | ○ | コント風 | ×→各シチュエーションでの場面設定あり | |
| 2025 | 3 | ベスト4 | 金属バット | 「じゃんけん」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2025 | 3 | ベスト4 | はりけ~んず | 「なんでも鑑定団・子ども」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 2026 | 4 | 優勝 | トット | 「架空家族」 | △ | ○ | △ | しゃべくり | △→家族会話の場面と妄想キャラを演じる | |
| 2026 | 4 | 準優勝 | 金属バット | 「パン」 | × | △ | ○ | しゃべくり | 独演かつ作り話だが、コントの要素がない | |
| 2026 | 4 | ベスト4 | タモンズ | 「ビール(お酒)」 | ○ | ○ | △ | しゃべくり | △→特徴的なキャラを演じているといえる | |
| 2026 | 4 | ベスト4 | リニア | 「ビジュアル担当」 | ○ | ○ | ○ | しゃべくり | ◎ | |
| 16 | しゃべくり漫才数 | 14 | 9 | |||||||
| しゃべくり漫才比率 | 87.5% | 56.3% |
4.まとめ ~「王道」の現在地から、漫才賞レースの楽しみ方を広げる~
今回の検証データから、「しゃべくり漫才がM-1で強い」と断定することはできません。
冒頭の「もし、やすきよがM-1に出たなら」にも答えは出せませんが、
M-1直近11年では48.5%そしてTHE SECONDでは87.5%という数字が出ていて、
少なくとも、王道はM-1グランプリでも存在感を出していると考えていいのではないでしょうか。
現在の賞レースでは、時代やトレンドに応じて、多様なスタイルがしのぎを削りつつも、しゃべくり漫才が健闘していること、THE SECONDにおいては「王道」が主流を占めているという事実から、キャリアの長さに関わらず、今の芸人が行き着く漫才のスタイルの1つとして、やはりしゃべくり漫才があることを示唆しているといえます。それは、観客や審査員など受け手が支持するスタイルともいえることだと思います。
だからこそ、これから漫才を鑑賞する時は、「このネタは面白いか」だけでなく、「場の空気感をどう作っている?」「二人の会話はどう展開している?」「出演者の人間味がどう出ている?」という視点を加えてみてはいかがでしょうか。
このように、しゃべくり漫才の醍醐味と現在地を知れば、毎年の漫才賞レースも、これまでとは少し違って見えてくるはずです。
そして、さらに漫才を楽しみたくなった方には、次の9冊がおすすめです。
5.漫才をもっと楽しめるようになる「おすすめ書籍9冊(漫才論・M-1・話術)」
ここまで読んで「もっと漫才のことを知りたい」と思った方へ。最後に、「漫才そのものを考える本」「M-1を知る本」そして「芸人に話術を学ぶ本」を9冊紹介します。
<漫才について造詣を深める>
『最強の漫才 東大と吉本が本気で「お笑いの謎」に迫ってみた!!』 東京大学×吉本興業 編/講談社(2023年)
芸人の理論と東大研究者の分析で「漫才の構造」に迫る大判の一冊。
ファンのデータでM-1勝者を予測する企画も収録されています。漫才を科学的な視点でも見てみたい人におすすめです。
『答え合わせ』 石田明/マガジンハウス(2024年)
NON STYLEの石田明さんが、漫才論からM-1論までを語り尽くす一冊。
「ベタが最強」など、漫才の見方が深まる考え方が並びます。今回の記事のテーマとも特に相性のよい一冊です。
『漫才論 僕が出会った素晴らしき芸人たち』 オール巨人/ヨシモトブックス(2022年)
劇場漫才にこだわり続ける巨人さんが、面白い漫才とは何かを綴る一冊。
ダウンタウンらへの視点やM-1論、「漫才適齢期」にも触れています。しゃべくりの王道を深く知りたい人におすすめです。
<M-1とは>
『笑い神 M-1、その純情と狂気』 中村計/文藝春秋(2022年)
芸人とスタッフ80人以上の証言で、M-1に懸けた漫才師たちの熱狂を描くノンフィクション。
笑い飯を軸に、20年の笑いの革新を追います。M-1の人間ドラマを味わいたい人におすすめです。
『M-1はじめました。』 谷良一/東洋経済新報社(2023年)
M-1を立ち上げた元吉本興業の谷良一さんが、島田紳助さんへの相談から、賞金1,000万円の大会が生まれるまでの舞台裏を語ります。
M-1の原点とその背景を知りたい人におすすめです。
<M-1と漫才の関係を探る>
『漫才過剰考察』 令和ロマン・髙比良くるま/辰巳出版(2024年)
M-1王者・令和ロマンの髙比良くるまが、M-1や漫才について徹底的に考察した一冊。
M-1の分析だけでなく、漫才の構造や客層、地域などが漫才に与える影響などにも話が広がります。
「M-1をもっと分析しながら観たい」という人におすすめです。
『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』 塙宣之/集英社新書(2019年)
ナイツ・塙宣之が、M-1の歴代王者や漫才の技術を分析。
「ツッコミ全盛時代」「関東芸人の強み」「フリートーク」など、M-1と漫才を考えるうえで興味深いテーマが詰まっています。
<芸人に学ぶ話術>
『おもろい話し方 芸人だけが知っているウケる会話の法則』 芝山大補/ダイヤモンド社(2022年)
元芸人のネタ作家が、リアクションやツッコミなど「ウケる会話」の法則を伝授します。
自分の会話タイプがわかる診断つき。日常会話や職場の雑談を、もっと楽しくしたい人におすすめです。
『すぐに使える! おもしろい人の「ちょい足し」トーク&雑談術』 桑山元/日本実業出版社
お笑い芸人で話し方講師でもある桑山元さんが、すぐ使える「ちょい足し」の技術56の法則を紹介。
ツッコミを「通訳」と「橋渡し」と捉える考え方も学べます。雑談が苦手で、気軽に会話を広げたい人におすすめです。
漫才は、ただ笑うだけでも十分に楽しいものです。
でも、「なぜ、この二人の掛け合いは面白いのか」
「なぜ、このネタはM-1で評価されたのか」と
少しだけ考えてみると、同じ漫才がもう一段深く見えてきます。
これからのM-1も、THE SECONDも、そして昔の名人芸も――。
「しゃべくり漫才」という王道を一つの物差しにして観てみると、
漫才の楽しみ方は、まだまだ広がっていくのではないでしょうか。
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