
これまでで私がもっとも号泣したマンガ。とにかくおすすめしたいマンガ。それが『ANGEL VOICE』(作者:古谷野孝雄)です。スポーツ漫画に数多くの名作あれど、この作品は単なるサッカー漫画の枠を超えて、人間味あふれた感動を呼び込んでくれます。読み進めるたびに胸が熱くなり、気がつけば大粒の涙が頬を伝っている——そんな体験をさせてくれた珠玉の漫画を紹介します。
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1.『ANGEL VOICE』とは?
『ANGEL VOICE』は、古谷野孝雄先生によるサッカー漫画です。千葉県、市立蘭山高校、通称「市蘭」。ここのサッカー部は「県内最強軍団」と呼ばれていた…。ただし、それはケンカでの話であり、荒廃したサッカー部を立て直すためにスカウトされた黒木は、「中学最強」(ただしケンカで)の4人を軸にチームを再生しようとする。。。一見すると、彼らが暴れながら勝ち進んでいくだけの物語に見えるかもしれません。不良が少しずつ更生していくストーリーから、サッカー版スラムダンクやサッカー版ルーキーズなんて呼ばれることがあります。しかし、一人のマネージャー・高畑麻衣の存在が、この物語を特別なものに変えていくのです。地味な女子高生麻衣の美しい歌声と、その歌に込められた想いが、荒くれ者だった部員たちの心を徐々に変えていきます。この作品の真の魅力は、一般的なサッカー漫画の枠を大きく超えたところにあります。単純な勝敗を超えた、困難に立ち向かい乗り越えていく姿、仲間との友情、そして命の尊さが、読者の心を深く揺さぶるのです。

2.なぜこんなにも泣けるのか?
(1)まさかの展開が織りなす感動
『ANGEL VOICE』の魅力の一つは、特に後半に起こる「まさかの展開」にあります。単純に不良たちが成長して勝ち進んでいく物語かと思いきや、予想もしない出来事を伴いながら物語は進んでいきます。物語終盤になるにつれ、胸が熱くなるのですが、最も感動的なのは、部員たちが「勝利を誓った涙」を流す場面です。これまで自分勝手な感情表現しかできなかった荒くれ者たちが、仲間のため、チームのため、そして何よりも、、、本気の覚悟とともに涙を流す姿は、読者の心を強く打ちます。

(2)挫折と成長そして困難に立ち向かうストーリー
『ANGEL VOICE』の登場人物たちは、決して順調に成功を重ねるわけではありません。むしろ、多くの挫折と失敗を経験します。しかし、それらの経験こそが彼らを成長させ、より強く、より優しい人間にしていくのです。
この「挫折→努力→成長」のサイクルは、読者にとっても非常に感動的です。なぜなら、それは私たち自身の人生の縮図でもあるからです。彼らが困難に立ち向かう姿を見ることで、読者も勇気をもらえるのです。
千葉県大会決勝の相手は、前年に「1対9」で大敗した因縁の相手でした。この圧倒的な実力差は、単純な努力だけでは埋まらない現実を表しています。それでも部員たちは、チームとしてのリベンジそして仲間への想いを胸に戦い続けます。この姿こそが、真の人間の美しさを表現しているのです。

(3)歌声が紡ぐ奇跡の物語と残酷な現実
この漫画の最も巧みな演出の一つは、「歌」というモチーフの使い方です。そもそも、サッカー漫画に「ANGEL VOICE」というタイトルに違和感を感じるかもしれないのですが、ケンカばかりの部員を落ち着かせるために、マネージャーの高畑麻衣が歌を歌う、この歌声が「天使の歌声=ANGEL VOICE」ということで、このタイトルなのです。高畑麻衣の歌声は、単なる応援歌ではありません。それは部員たちの心の奥底に眠る純粋な気持ちを呼び覚ます魔法のような力を持っています。彼女の歌声が、不良だった部員たちを真のチームへと結束させていく過程は、読む者の心に深い感動を与えます。


作品の中で高畑麻衣が歌う歌ですが、はじめは”翼をください”から始まり、途中から”You’ll Never Walk Alone”を歌うことになります。この歌はサッカー部の仲間たちを大いに勇気づけることになるのです。
♪つらいことがあっても、
君は決して一人じゃないんだよ、
希望を胸に一緒に歩いて行こう♪
サッカーとの関係が深い歌で、フィールドで闘う選手たちにサポーターが勇気を与える歌としても愛されていて、多くのサッカークラブで歌われています。最も代表的なのがイングランドプレミアリーグのLiverpool FCでしょう。https://youtu.be/Go-jJlGd1so 日本ではFC東京が応援歌としています。https://youtu.be/LEhVBBguy0Q
サッカーファンにおなじみのこの曲が、作品全体を象徴する歌にもなっているのです。
しかし、この美しい歌声にも終わりが来ます。このことは、読者に現実の儚さと尊さを痛烈に感じさせます。彼女が部員たちに残した歌声と愛情は、彼らの心に永遠に響き続けるのです。この対比こそが、『ANGEL VOICE』が他の作品と一線を画する理由でもあります。

3.読者の心に響く他のポイント
(1)スポーツ漫画としての秀逸さ
『ANGEL VOICE』は、サッカーというスポーツの魅力を余すところなく表現した作品でもあります。試合シーンでは、選手たちの動きが躍動感たっぷりに描かれ、読者はまるで実際の試合を観戦しているかのような臨場感を味わえます。また、サッカーの戦術的な側面も丁寧に描かれており、サッカーファンにとっても読み応えのある内容となっています。しかし、サッカーに詳しくない読者でも十分に楽しめるよう、基本的なルールや戦術が分かりやすく説明されているのも好印象です。

(2)チームワークの重要性を絶妙に表現
この作品では、どんなに優秀な選手であっても、一人では勝つことはできない——この普遍的なテーマが、サッカーというスポーツを通じて美しく描かれています。仲間と協力し、お互いを信頼し合うことで初めて真の力を発揮できるというチームワークの重要性が強調されています。チームが一つになる瞬間、選手同士が完璧な連携を見せる場面では、読者も胸が熱くなります。これは単なるスポーツの勝利以上の、人間同士の絆の勝利だからです。

(3)現実的な厳しさと人間味あふれる展開の描写
『ANGEL VOICE』の特筆すべき点は、神業のような必殺技やご都合的な展開に頼らないことです。むしろ辛く悔しい出来事が多く発生し、読者が歯がゆく思う場面も多々あります。しかし、まさにこの現実的な厳しさこそが、この作品をより深いものにしているのです。
ケンカ自慢だった部員たちも、不良という表面的なレッテルの奥に、実は深い傷や悩みを抱えていました。家庭の事情、過去のトラウマ、自分への不信——これらの複雑な感情をその本質を見抜く洞察力とともに丁寧に描写されています。
ここまで人間味に溢れたスポーツ漫画は他にありません。完璧ではない登場人物たちが、それぞれの弱さを抱えながらも、仲間と共に成長していく姿は、読者の心に深く響きます。

【これもポイント☝️】壮大な伏線回収でさらに感動
最も感動的な場面として、上の2.(1)で紹介した「涙ながらに決意を固め、ピッチに向かう」というシーンは単行本第35巻のクライマックスとして出てきます。実は、そのシーンが第1巻のカラー表紙と同じなのです。それに気付くと誰しも鳥肌立つ思いになります。第1巻の発売は 2007年9月です。第35巻は2013年12月なので、約6年かけて壮大な伏線回収をしているのです。最初から、終盤のクライマックスを想定していて、それを冒頭にさらしながらも、6年後に感動の頂点でブチかますというこの漫画はほんとに凄いです。


まとめ:『ANGEL VOICE』は泣けるスポーツ漫画の最高峰
私はこの漫画のクライマックス場面を、電車の中で読んでました。涙ぐむどころか、人前というのに自然に流れる大粒の涙が止まりませんでした。『ANGEL VOICE』は、まさに「号泣必至」の感動作品というレビューが非常に多いことも今回知りました。ここまで人間味に溢れた感動を与えるスポーツ漫画は他にありません。泣けるスポーツ漫画を探している方、純粋な感動を求めている方、そして何かに立ち向かう勇気がほしい方——すべての人におすすめできる珠玉の作品です。ぜひ一度手に取って、この奇跡のような物語の世界に浸ってみてください。きっと、あなたの人生にとって大切な一冊となることでしょう。
















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